「先週より悪くなってますね・・・」
耳鼻咽喉科のドクターは、ちょっと呆れ声でスセリに告げた。
「先週より、ノドが腫れてますけど・・・」
スセリは、正直に告げた。
「先週風邪をひいて、7度6分の熱が出ました・・・
それで、頂いた薬を休んで、市販の薬を2日飲みました」
「そうですか。うがいはしていただかないと・・・」
ドクターは、基本的な注意事項をスセリに告げた。
「峠は越えてるみたいなので、抗生物質は出さないでおきましょう・・・」
スセリは、またまた、正直に告げた。
「実は、喋る仕事と、歌の舞台があったのですが・・・
それで、傷めてるのかもしれません」
「そうですか、それではいつまでも治りませんね・・・」
ドクターは、声帯の写真を見せて、手術の話を始めた。
「まだ、大きいポリープではないので、
この病院の機械より精密なものでないと除去できません。
紹介状を書くか、機械を借りてきて手術でもよいのですが」
スセリは、ビビッて、質問した。
「あの、一ヶ月くらい休めば治りますか?
そのくらいでしたら何とかなるのですが・・・」
「一ヶ月で治ると言う保障はできません」
ドクターは、スセリをみて言った。
「まぁ、今すぐどうこうという事ではないですが
今みたいに使っていれば、治りませんよ」
スセリは、しょんぼりして「ハイ、わかりました」
と、返事して診察室を後にした。
「まいったなぁ。どうやって、しゃべらないで働けっていうのよね」
「しょうがないや、断れるものは断ろう」
「あ、今日、ボクシングだよ・・・声出して応援できないな・・・」
スセリは、あまり緊迫感のない患者だ。
とにかく、まず、風邪を治さないことには・・・。
断れないの?ボクシングは仕事じゃないけど・・・。
「だめ、今日は28人の応援団のまとめ役だから、チケットのこととか色々あるの」
「終わってからの飲み会は断るから」
当たり前だよ!
病院いくのもフラフラしてたじゃないかよ!
「病気の時って歩くの遅くなるよね。不思議!」
不思議とかじゃなくて、とにかく、断れるものは断って安静!
「そうだ、四谷Kのライブの歌の練習もしないといけないしね」
「来月はラブソングだから」
馬鹿じゃないの?歌?
ドクターに「手術」って言われたでしょ!
どうしてもしたかったら、歌わないでギターだけ触ってなさい。
「え?次のライブ、ギターの演奏だけ?インストルメンタルだっけ?
まだ早いんじゃないのかな?」
ああああああ、あほ~~~~~~~~~~っつ!
おのれは、まだ、AmとEmしか押さえられんのに、
どの面下げてインストなんじゃあ~!
馬鹿は、寝てろ~~~~~~~っ!
起きてくるな~~~!
「ま、とにかく痛み止めもらったから、また眠くなると思うよ、そんじゃあね~」
はあ、はあ・・・く、くそ~~~。ヌカに釘じゃ~!
来月はラブソングって・・・。
この女に、恋の歌とか書けるのだろうか?ぎ、疑問だし・・・。
資料はいいから・・・実体験で・・・経験談で・・・あ、無理か・・・。